So-net無料ブログ作成

岡山〈境界岩探索〉(宇部市東吉部) [県西部の山]

岡山は昨年9月に歩いたが、目的のひとつだった境界岩探しは夏場のため不首尾に終わったので、再度挑戦することにした。今回は地下上申の記述をじっくり読み、予め岩の位置を想定した上で2回にわたり歩いてみた。1回目は積雪直後で下見の形となったため、2回目の探索を中心に記したい。(写真は両方から選択して登載)
ルートは、水尻集落から林道を利用して山越えをし、美祢市境近くの峠から林道や周回道を利用しながら市境を歩き、岩を探索。帰路は林道支線に入り、植林作業道を下って柏村集落に出ることにした。したがって、地下上申の隣村境書の記述とは逆方向でたどることになる。
なお、地形図の市境稜線上にある標高332mの峠から柏村へ下る破線道は、1回目のとき竹等でヤブ化しているのを確認していたので、利用しなかった。
P1080130黒川集落から岡山南峰(右).JPG黒川付近から岡山南峰(右端)

■地下上申等の記述
「防長地下上申」吉部村隣村境書の境界岩に関連する部分を以下に引用しておく。

「… ろんて山之尾下り木部村之内柏村より伊佐村之内杉谷え出ル道を横切り、夫よりつぶ池山え登り、せきせうか垰え下り追分石有之、此石牛馬足形有之、此石物境、夫より鼓岩か後平狼岩平と言え取付、嶺尾より北平六分めえ下り道有之此道より上は木部村、道より下は伊佐村也、右小道よりどうが原山え取付、此山後ノ方北平ハならき尾と云物境之狼岩え取付、後平ならき尾嶺尾より五分目下り右狼岩有之、狼岩より上は木部村、狼岩より下は伊佐村也、右狼岩より高嶽山後北平嶺尾より六分目下り、物境之ぬめり岩え取付、此ぬめり岩より上は木部村、下は伊佐村、右ぬめり岩より北平東ノ方え六分目通り廻り高嶽之尾へ取付、此尾尾境ニて此尾下り、尾末ニ物境之わり石有之候、此わり石より鳥越堤え取付、此堤北ノ方へ三分めハ伊佐村、七分め南の方は木部村、此堤よりは木部村之内犬か迫より伊佐村之上ノ村え出ル道え取付、…」

また、「防長風土注進案」東吉部村の山川之形勢の項には、「西ハ先美禰郡杉谷村境追分ケ石より狼岩 辷り石 割石 鳥越堤 … 」という記述がある。

なお、「地下上申」伊佐村境書之事の項では、「南ノ方吉部村境は、犬迫道を横切野山え取登りかし舟垰え下り、夫よりそらか河内、…」とあり、岡山付近の旧村境がピークを通らず、岡山山頂も吉部側であるせいか、「野山」と記すだけで境界岩の記述もなく、実にそっけない。

■ 境界岩の位置の推定
吉部村隣村境書の記述から、標高408mの岡山南峰(地形図では「岡山」)が「堂ヶ原山」、標高423mの山が「高嶽山」と判断される。したがって、これを前提に境界岩等の位置を探索前に以下のとおり推定した。

まず、「柏村より杉谷え出ル道」は標高332mの峠を越える破線道と同じと見てよいと思われる。

次に、「つぶ池山」は、標高332mの峠のすぐ東の標高350mの小山、「せきせうか垰」をそのすぐ東の鞍部と当初考えた。この「せきせうか垰」には牛馬の足形が残るという「追分石」がある。そこで、下見の際鞍部へ上がって植林境付近を探索したが、これといった岩は見当たらなかった。下山後、このあたりは稜線上に小ピークがいくつも並んでおり、これらの小山を総称し「つぶ池山」と呼んだのではないかと考え直し、「せきせうか垰」は公社看板が立つ峠あたりと推定した。公社看板には字名「津婦池」が記されている。

「せきせうか垰」から山腹道が旧村境となっている。「狼岩」は堂ヶ原山(岡山南峰)の「ならき尾」という支尾根上にあることから、南峰から北西に派生するいくつかの支尾根のひとつに位置すると推定する。なお、「ならき尾」は「楢木尾」と考えられ、雑木尾根であろう。

「狼岩」からさらに山腹道が続き、高嶽山(岡山北峰)の山腹道に変わると、支尾根上に「ぬめり岩」がある。

ここで道が東の方向へ回りこみ、再び高嶽山の尾に取り付き、尾境を下ると、尾末に「割石」がある。したがって、両岩とも北峰から北西もしくは北に派生する支尾根上に位置すると推定した。

旧村境は、「割石」から「鳥越堤」に下り、犬ヶ迫から上野へ抜ける道を横切ることから、鳥越堤は北方向の上野側の谷を堰きとめる形であったと考えられる。

■ 境界岩の探索
岡山3.jpg 
岡山2.jpg (クリックで拡大)

水尻集落の東外れに駐車し集落道に入る。
P1080021駐車地・分岐.JPG駐車地・分岐

舗装切れの分岐で左の林道に上がる。
P1080023分岐.JPG林道分岐

その先で右に林道を過ごし、荒れ林道を登り切ると、峠上で林道が十字交差となる。
P1080024林道.JPG林道
P1080029林道.JPG林道
P1080032鞍部・林道十字分岐.JPG鞍部の林道交差

そのまま直進して下ると県道へ合流する。
P1080033県道へ出る.JPG県道へ出る

「求道」と刻まれた県道開通記念碑を右に過ごし、市境手前の峠まで舗装道を歩く。峠を少し下ったところから林道に入る。

P1080034林道開通記念碑.JPG県道開通記念碑
P1080035峠・林道分岐.JPG峠・林道分岐
P1080036市境表示板.JPG市境表示板

◆ 割石
最初のカーブを左に曲がり、少し進んだところで、右側数m先の植林帯の中に岩を見つける。下りてみると、大岩が二つほどあり、両岩とも割れ目がある。これらを「A岩」とし、これを「割石」の有力候補とする。ただし、地形図上の市境から100m以上東にある。
ここで、県道の両脇に立つ市境看板の位置が地形図の境界位置より100mほど東にずれて立てられていることに注目したい。この位置が本来の市境であるとすれば、A岩の位置が市境であってもおかしくない。ただ、地下上申の記述によると割石は高嶽山の尾根を下った尾末にあるとしていることから、A岩が割石とすると、旧村境はぬめり岩から東に回り込み、この岩の上部の尾根から下った形で付いていたこととなる。
P1070944 岩A-1.JPGA-1岩
P1070945岩A-1.JPGA-1岩(割れ目)
P1080040岩Aー2.JPGA-2岩

◆ ぬめり岩
林道に戻り、次の支尾根を右に回り込んだところで、左に字の消えた看板を見る。
P1080043看板.JPG看板

さらに次の支尾根を大きく右へ回りこむと、カーブの先端部に大岩が二つ並んでいる。これを「B-1岩」とする。
P1080044岩B-1.JPGB-1岩
P1080045岩B-1.JPGB-1岩

この岩の右横から支尾根へ上がり、ヤブ気味の植林尾根上を進むと、間隔を置いていくつかの大岩に出会う。
二番目には平坦岩がある(B-2岩)。
P1070950岩B-2.JPGB-2岩

三番目は岩塔状の岩(B-3岩)。下部に割れ目がある。
P1070951岩B-3.JPGB-3岩
P1080049岩B-3.JPGB-3岩(下部の割れ目)

四番目は大小の二つの岩が並んでいる(B-4岩)。
P1070953岩B-4.JPGB-4岩

五番目は岩の集合体となっている(B-5岩)。
P1070955岩B-5.JPGB-5岩

最後の六番目も平坦岩で、そばに測量時のものと思われる竹が立ててある(B-6岩)。地形図上の市境線は、この岩あたりを通っている。
P1070956岩B-6.JPGB-6岩

ところで、ぬめり岩の「ぬめり(すべり)」とは、岩の表面がすべりやすいのか、それとも岩が斜面をすべっている状態か、両方の意に取れるが、前者と考えるのが一般的だろう。これら六つの岩の中ではB-6岩が「ぬめり岩」の有力候補と思われる。ほぼ市境上にあり、苔などは現在付いていないが、平坦であり、昔は苔むしていたのかもしれない。

さらに尾根上の踏み跡をたどって進むと、周回道に出る。今回は登頂が目的ではないので、右折し、市境と平行して延びる周回道を進む。
P1080056岩上から上方.JPG尾根上の踏み跡
P1080057周回道左.JPG周回道(左側)
P1080058周回道右.JPG周回道(右側)

ササ被りを抜けると、右の林道から上がってきた踏み跡程度の山道が合わさる。
P1080059林道からの踏み跡.JPG林道からの山道

すぐ先で道のすぐ右手に平坦岩(C岩)がある。小規模であり、これは境界岩の対象外としてもよいだろう。
P1080062岩C.JPGC岩

さらに少し先で、右下に大岩が3つ程度見つけることができる(D岩)。測量用の竹も立ててある。岩上が斜めの岩もあり、すべりやすいかもしれない。
P1070962岩D-1.JPGD-1岩
P1070963岩D-1(下方から).JPGD-1岩(下方から)
P1070965岩D-2.JPGD-2岩
P1070967岩D-2(側面から).JPGD-2岩(側面から)
P1070966岩D-3.JPGD-3
P1070968印のタケ杭.JPG測量用の竹

またさらに先へ進むと、今度は左の斜面上に小規模な岩が散在している。平坦な岩も二つほどある(E岩)。
P1080069岩E-1.JPGE岩(全体)
P1080070岩E-2.JPGE-1岩
P1080071岩E-3.JPGE-2岩

これらC、D、Eの岩も、岡山北峰から派生したそれぞれ別の支尾根上にあり、一応ぬめり岩の条件は満たしていると思われる。

周回道を進み、北峰と南峰間の鞍部へ向う山道を左に分け、国調筆界杭のところで周回道は左上方の稜線へ向う。
P1080072ササが目立つ周回道.JPGササが目立つ周回道
P1080074周回道登り.JPG稜線へ向う

前回は夏場でササが茂っているため、稜線上から南峰へのアプローチは断念したが、今回(下見時に)、南峰まで歩いてみた。植林境にササが茂っているが、測量等による踏み跡が付いており、それほど難渋せずに山頂まで行くことができる。夏場は再び茂るかもしれない。
P1080075周回道稜線合流点.JPG稜線部
P1080076ササ被りの尾根道.JPGササ被りの尾根道
P1070982ヒノキ林境の尾根道.JPGヒノキ林境
P1070985岡山南峰山頂.JPG南峰山頂
P1070986山頂からの展望日の山、岡山北峰、荒滝山).JPG山頂からの展望(左から日ノ岳、岡山北峰、荒滝山)

周回道へ戻り、先ほど登った斜面を途中まで下った。夏場に歩いたときは一番下まで下りて、南西方向へ雑木ヤブの中をトラバースしたが、帰宅してトラックデータを確認したところ、市境より少し北側にずれていたことが分ったので、今回はひとつ手前の小プラスチック杭(「山口県」の字がある)のあたりから、トラバースを試みた。
P1080077周回道・市境杭.JPG周回道・プラスチック杭

◆狼岩
市境は雑木疎林のヤブで、明瞭な踏み跡はないので、高度を保ちながら平行移動するしかない。
周回道から少し入るとすぐに平坦岩がある(F岩)。近くに国調筆界杭もある。
P1080078岩F.JPGF岩

所々ヤブの中に市境のプラスチック杭を確認しながらトラバースを続ける。
P1080080市境・国調筆界杭.JPG国調筆界杭
P1080081アオキヤブの市境.JPGアオキヤブ
P1080082アオキヤブの市境測量杭.JPGアオキヤブの中の杭

まもなく二つの大岩に出会う(G岩)。雑木疎林で視界はきかないが、雑木高木がなければ、平坦な岩上に立つと、展望が開けるに違いない。狼岩にふさわしい風格が感じられる。
P1080084岩G-1.JPGG-1岩
P1080088岩Gー1上方から.JPGG-1岩(上方から)
P1080085岩G-2.JPGG-2岩

さらに移動すると平坦岩がある(H岩)。先ほどのG岩に比べると少し見劣りがする。
P1080089岩H.JPGH岩

これらのF、G、Hの岩は、岡山南峰から派生したそれぞれ別の支尾根上にあり、狼岩の条件は満たしていると思われるが、やはり風格のあるG岩が第一候補だろう。

トラバースをさらに続けると、すぐにヤブが濃くなり、そろそろ主稜線に出た方がいいかと思い始めたところ、前方に町有林の白ポールを見付ける。ここからヒノキ植林境が始まっており、稜線と平行して植林境を進む。
ヤブで少し荒れはじめたあたりで境界歩きをあきらめ、左の植林帯へ突っ込み少しヤブを分けると、林道へ飛び出る。(ヤブの植林境をそのまま進むと尾根から逸れて谷へ下ってしまう)
P1080090町有林ポール・市境測量杭.JPG町有林ポール
P1080091市境・植林境.JPG植林境を進む

◆追分石
林道へ出たあたりが、岡山南峰(堂ヶ原山)と小ピークの間の鞍部であり、この付近が「せきせうか垰」と推定したところである。林道を少し西へ進み主稜線と交わるところに土地使用承認掲示板がある。
P1080096岡山南峰、公社看板.JPG公社看板の立つ林道と岡山南峰
P1080097公社看板.JPG掲示板

このあたりに追分石があるだろうと鞍部周辺を探索してみた。「追分」とは、『地名語源辞典』によると「道の分岐点」という意味らしい。
周辺はヒノキの植林帯となっており、高木ではないためヤブが濃いところも多く、岩を探すのはなかなか難しい。そのうち、林道わきに伐採木の下に埋もれている小岩を何とか見つけた(I岩)。上に被さっている朽ちた伐採木をのけてみたが、表面には小さな窪みがいくつもあるが、牛馬の足形様のものはない。他にこれといった岩が見付からないので断念した。
P1080094岩I.JPG林道わきのI岩
P1080092岩I.JPGI岩表面
P1080093岩I表面.JPGI岩表面(拡大)

以上、今回探索した範囲で自分なりに境界岩の位置を推定してみたが、我田引水の部分もあるだろう。
後日、山口県文書館で地下上申絵図を調べてみたが、特に「追分石」や「せきせうか垰」の位置に疑問が残る。機会があれば再度探索してみたい。

帰路は、北側の眺望を楽しみながら主稜線上の林道分岐点まで進み、東吉部側へ付けられた林道支線へ入った。
P1080098林道から岡山南峰.JPG林道から岡山南峰
P1080099林道から日の岳・岡山北峰.JPG日の岳・岡山北峰
P1080100林道から日の岳.JPG日の岳
P1080101林道から秋吉台.JPG秋吉台
P1080102林道分岐.JPG林道分岐点
P1080104林道支線.JPG林道支線

途中展望が開け、内立山方面などが眺められる。
P1080103林道支線から内立山.JPG林道支線から内立山


一旦少し登り返し、稜線に近くなった終点部から作業道を下った。少し荒れているが、林業作業時には使用されるのか、カヤなどの下草が刈られている。
P1080105作業道が下部へ分岐(逆方向).JPG作業道が下方へ分岐(逆方向)
P1080106作業道跡・カヤ.JPG作業道

途中いくつか分岐を過ごし、どんどん下っていくと、竹ヤブとなりひるむが、構わず進むと、何とか荒地の広場へ抜け出る。
P1080109作業道合流.JPG作業道合流部
P1080111竹ヤブの作業道.JPG竹ヤブ
P1080116竹ヤブ出口(逆方向).JPG竹ヤブ出口(逆方向)
P1080117荒れ地広場.JPG荒れ地広場

ここは右折し、踏み跡をたどると、柏村最奥民家近くの集落道に出る。
P1080119山道に出る.JPG踏み跡
P1080120舗装道合流部(逆方向).JPG集落道へ出る(逆方向)

南麓を伊佐地、宮馬場、大畑、水尻と回って駐車地へ戻る。
P1080124吉部八幡宮.JPG吉部八幡宮
P1080127水尻集落手前から岡山北峰.JPG水尻集落手前から岡山北峰